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理二の学生・OBOG・先生が語る 理科大Voice

数学を勉強すること、それが入学の目的でした

  • OB・OG
  • 石垣博司さん(数学科卒業)

【はじめに】
 私は、2010年4月、理学部二部数学科に社会人特別編入学制度を利用して2年生として編入学しました。56歳でした。その後、2013年に理学部二部を卒業して大学院理学研究科に入学し、2015年に修士課程を修了しました。卒業研究と大学院ゼミでは佐藤先生にご指導いただきました。
 今回ホームページに載せる文章の依頼を承ったのですが、すでに載っている社会人卒業生の皆様の文章を拝見して、少々自信がなくなりました。すなわち、理学部二部で学んだことを現在の仕事に生かしているという例や、仕事をしながら転職を目指して理学部二部で勉強し、その夢を実現したという例などが載っているのですが、私の場合は単に数学を勉強したいだけだったからです。
 しかし、理学部二部で私と同じ世代(以下、シニア世代という)の学生の方を拝見したところでは、私のように数学の勉強自体が目的という方も少なくないと感じました。そこで、今後理学部二部で勉強してみようと考えているシニア世代の皆様に何かお役に立てることがあるかも知れないと思い、理学部二部で勉強した体験を少し思い出しながら書いてみることにします。

【理学部二部受験を決めた頃】
 私は工学系の大学院修士課程を修了したのですが、入学前は義父の経営する企業で給与計算や社会保険などの事務を担当していました。しかし、数学や理科に対する興味は消えず、放送大学の講義をテレビで見たり、情報処理技術者試験を受けてみたりしていました。
 義父が高齢と健康状態のため経営を退くようになり、私も退職を考えるようになりました。退職後何をするかを考えたとき、少し年上になる団塊の世代の人たちの大量退職に関連する報道で、退職後大学で勉強し直す人がいるという話が参考になりました。
 そこで、私も大学で勉強してみたいと思い、社会人編入学制度がある夜間部をさがしたところ、理学部としては東京理科大学理学部二部だけであることが分かりました。当時勤務先は江戸川橋で、飯田橋は一つ隣の途中下車に当たるので通学条件は良く、早速受験を決めました。学科は、最も興味がある数学科に決めました。

【入学前後】
 社会人編入学制度を利用する場合は、入試自体は面接だけで筆記試験はありませんが、出身大学の卒業証明書や成績証明書が必要になるなど、出身大学の事務には何回かお世話になりました。
 合格すると、入学時に単位認定の手続きがあります。これは出身大学で取得した単位を理学部二部での単位として認定する制度で、認定されないと卒業単位として計算されません。注意しなければならないのは、一般教養科目(理学部二部では一般科目という)についても大卒の編入学だから自動的に免除されるということはなく、認定の手続きが必要だという点です。出身大学のシラバスなどで講義の内容を明らかにし、理学部二部のどの単位として認定してほしいかという書類を作成し、説明して認定をいただくことになります。
 私の場合は、この単位認定制度を利用しませんでした。再度大学で勉強しようと決めたのだし、卒業を急ぐわけでもないので、すべての単位を取得すれば良いと考えたからです。

【理学部第二部】
 単位認定制度を利用しなかったので、2年生、3年生の時は履修登録可能な最大限の科目数を履修しました。
 2年生編入学の最初の学年で、数学については1年生対象科目だけでなく2年生対象科目も履修しました。
 1年生対象の解析学1(1変数の微分積分学)や代数学1(線型代数学)は理科系学生として昔勉強したことがあり、数学科らしく証明を厳密に行うとしても予想通りの内容でした。この他、前期では数学概論という科目があり、これは集合や写像について講義と演習で丁寧に取り扱うもので、数学科の学生として必須の内容と考え、復習を十分にして理解を図りました。
 これらに対して、2年生対象の代数学2(初等整数論と群論)や位相A、B(集合、写像、距離空間など)も履修したのですが、これらは数学科に入ったばかりの私には少々発想の転換が必要な理解が難しい科目であったといえます。しかし、逆にこれらの科目こそ数学科で勉強しているという実感が得られるものでした。
 さらに、一般科目として英語1A、1Bとドイツ語1A、1Bを履修しました。語学は予復習が欠かせず、週に四つも語学があると結構な負担になりました。
 3年生になると数学科の専門科目が多くなり、内容も一段と難しくなりますが、専門的なおもしろさも増してきます。私は、可換代数、ガロア理論、位相数学などに特に興味を持ちました。また、2年生対象科目で未履修の解析学2(多変数の微分積分学)なども履修しました。
 一般科目は、必修科目として英語が二つ残っていましたが、負担の大きさを考えて3〜4年生で一つずつ履修することにし、他に論理学を選びました。
 2〜3年生の時に予定通り単位を取得することができ、無事4年生の卒業研究に入ることができました。卒業研究としては、群論やガロア理論に興味があったので代数学の佐藤先生のゼミを選択しました。
 4年生まで英語を含めた一般科目を残してしまったのは少々失敗だったかも知れません。特に英語は、残り一つを落とすと卒業できないので万が一を考えて二つ履修することにし、予復習の負担が大きくなってしまいました。また、国文学も履修しました。これは古事記の上巻を読むもので、以前から古事記には興味を持っていましたが、数学科に入って古事記を読むとは思っていませんでした。
 また、卒業を考えたとき、数学の勉強を学部だけで終わらせるのでは物足りないと感じましたが、さいわい大学院内部進学の推薦が受けられそうなので、佐藤先生に相談して大学院に進学することにしました。
 理学部二部の三年間を振り返ると、本来四年間で取得するように配置されている科目を三年間で取得したのですから、やはり少々無理があったと思います。これから入学される方には、単位認定制度を適切に利用されることをお薦めします。

【大学院修士課程】
 大学院では整数環上の線型群の表示に関するFraschのドイツ語の論文(1932年)を読むことにしました。私は、外国語の文献は、一般の新聞や雑誌の記事よりも専門書の方が読みやすいと考えていました。専門用語の意味は厳密に定義されていますし、数式で内容が理解できることもあるからです。しかし、van der WaerdenのModerne Algebraの初版が1930年ですから、Fraschの論文では現在の考え方や書き方とは異なっている部分もあるようで、内容的にも複雑な計算を行っているなど、読むのに苦労しました。また、読んで理解した結果をガウスの整数環上の線型群に適用して実際に計算を試みましたが、複雑すぎて不可能でした。そこで、Fraschの論文より計算が簡単になる内容のRademacherの論文(1929年)を探してきて読み、これをガウスの整数環上の線型群に拡張適用して実際に計算を行うことができました。
 最後に、学位記授与式では思いがけず理学研究科修士課程の総代として選んでいただき、武道館の壇上で藤嶋学長から直接学位記を授与されるという栄誉に浴することができました。

【割り算について】
 理学部二部数学科で学んだことはいろいろありますが、おそらく数学科でなければ学ばなかったと思われる例としてここで一つだけ割り算について紹介しておきます。
 私の記憶によれば、初めて割り算を習ったのは小学校3年生頃で、整数の範囲で、
割られる数÷割る数=商…余り
と計算するというものだったと思います。たとえば、
15÷7=2…1
です。しかし、その後小数を習い、割り切れるまでまたは循環が現れるまで割ってしまう方が「偉い」ような気になりました。さらに、工学部出身なので有効数字の考え方が重要であり、商を上位2〜3桁まで求めれば余りなどに意味はないという考え方になっていました。つまり、極端に言えば割り算は商の大小を求めるだけの演算だという考え方です。
 ところが、数学科では初等整数論で合同関係というのが出てきます。これは割り算の余りに注目して余りが等しいものを合同であると考えるもので、たとえば、8も15も7で割ったときの余りが1なので、合同式で
8≡15(mod7)
と書きます。
 最初にこれを見たときは、整数論の理論の話であって、実生活にはあまり関係ないという印象を受けました。しかし、よく考えてみると、これはカレンダーや時計をはじめとして特に時間に関する取扱いにおいて普通に採用されている考え方であることに気がつきました。たとえば、ある月において8日と15日は同じ曜日になりますが、ここでは「合同」の具体例として「同じ曜日である」と考えているわけです。
 また、余りに基づいて分類するという考え方がでてきます。たとえば、ある月の日付の集合{1,2,3,・・・,31}を7で割った余りに注目して部分集合に類別すると、
{{1,8,・・・,29},・・・,{7,14,・・・,28}}
のように7つの部分集合からなる集合が得られ、各部分集合に曜日を対応させる写像を考えると全単射(上への一対一の写像)が得られます。
 さらに、二つの整数の最大公約数を求めるユークリッドの互除法でも余りに注目して計算しますし、群を正規部分群で割るとどうなるかなど、代数学においては商よりも余りに注目する割り算が代数的構造を求めるために重要な役割を果たしているということが分かりました。

【おわりに】
 以上、今思い出して印象に残ることを書いてきましたので、体験を網羅しているわけではありません。
 理学部二部はシニア世代に入学の道が開かれているとはいえ正規の大学であり、学生の皆さんもほとんどが二十歳前後の若い人たちです。実際に大学で勉強してみると、やはり体力、視力、集中力、記憶力、理解力などあらゆる点で二十歳前後の若い学生の皆さんにはかなわないことを実感しました。しかし、もともと目的は数学を勉強すること自体にあるのですから、分からなければ分かるまで焦らないで考えればよく、忘れたらもう一度勉強すればよいので、勉強を諦めることはありません。理学部二部で勉強してみようと考えているシニア世代の皆様には、ぜひ挑戦されることをお薦めします。数学という新しい世界が開け、そして数学を学ぶ同世代の仲間あるいは若い世代の仲間が得られます。

数学を勉強すること、それが入学の目的でした

数学を勉強すること、それが入学の目的でした

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